今昔物語　道永真由己　VOL.5

　私が産まれ育ったのは、鹿児島の片田舎、大学はアメリカの「ど」田舎。 そして、年齢は20代前半。
田舎の方は特にそうだと思うのですが、一度は都会に憧れる時期ってありますよね。
当時の私も、華やかな大都会に憧れていたわけです。

　英語を活かせる仕事、空、飛行機が好きという単純な理由で、選んだのは某航空会社。
赤いところ、青いところ、色々ありますが、青いところです。お分かりですよね。
私の両親、特に母親は、アメリカ留学の時は鹿児島を出るってことだけでも猛反対したのですが、もうここまでくると、アメリカまで行ったのだから、日本であればどこにいても良いとまで寛容になっていました。 免疫がついたのか、言ってもきかないと諦めたのか（笑）

　地上職ではありましたが、私は羽田空港でグランドホステスとして働きました。
仕事は、出発ロビー、到着ロビーのカウンター業務。

　羽田空港は、毎日、何十、何百もの飛行機が離発着しています。
それらの飛行機を定刻通りに出発・到着させる為に、何百人もの人たちが関わって働いています。
それも、1分1秒単位で、時間には本当にシビアに動いています。
飛行機が遅れると、起因によってですが、報告書を書かされることもありました。
立ちっぱなし、走りっぱなし、どちらかというと、時間に追われ、飛行機に追われ、お客さんの対応に追われ、気が抜けるのは、お昼休憩の1時間のみ。
常に気を抜けない、せかせかした生活を送っていました。

　4日働いて2日休みというシフト制で、早番の時は、夜中3時とか4時起きで、もちろん電車は走っていないので、タクシーで相乗りしての出勤。
そして遅番の時は、仕事が終わるのが夜12時を過ぎることがほとんどで、これまたタクシーで相乗りして帰るという、なんともめちゃくちゃな生活リズムを3年間送っていました。
眠れずに仕事に行くなんてことはしょっちゅうで、3年間この生活のリズムに慣れたことはありませんでした。若いからこそできるお仕事でした。

　今では、利用する側に変わり、年に数回羽田空港を利用するのですが、新しいターミナルができ、当時私が働いていた頃とはだいぶ様変わりしています。

　無線でやりとりしながらお客さんを連れて走っているスタッフや、カウンター業務をしているスタッフを見ると、懐かしくもあり、「大変そうだな～」とか、心の中で、「がんばれ～」って応援してしまう自分がいます。
もちろん、「この子、対応いいな～」とか、逆に、「マニュアル通りだな～」とか元スタッフ目線で辛口にみることもしょっちゅうです（笑）

　当時は、契約社員として働いていたのですが、入社3年が次の契約を更新するかしないかの節目の年でもありました。
石の上にも3年という諺もありますが、「3年経ったし、もうここでは学ぶことはないな～」と生意気にも当時の私は思ったわけです。そこで、契約満了で更新しないことを決意し、新たな道への1歩を踏み出すのでした。

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