欲求と健康

更新日:2020.01.28

執 筆:整体師 中川裕二

養生訓から学ぶ、健康で過ごすための生き方

今から300年ほど前、江戸時代に貝原益軒という人が書いた「養生訓」には、人が健康に生きて行くためにどんな事に気をつければ良いのかが書かれています。

東洋医学では夏は冬よりも気の消耗が激しいと言われています。
そのため、一年の中でも夏は一番体をいたわり養生する事が必要な時期だとされています。

大切なのは、自分を裏切らないこと

その中に、「養生の要は、自分をあざむく様な行為を戒めて、忍ぶ事が大事である。」という一節があります。
自分をあざむく行為には、色々な事があると思いますが、大きく分けると2つあると思います。

  1. 自分の考え、モラル、自分の中での決まり事などを破ること
  2. 自分の本心や欲求などを裏切る行為

1.のような事をしていると自分で自分自身を裏切る事になり、自分を許せなくなったり、自分を信用できなくなってしまいます。
すると自己尊重感が低くなったり、他人も信じられなくなる事へ繋がり、心の平穏を保つ事が難しくなります。
そのような状態だと、ストレス耐性も低くなってしまい心の問題だけでなく体の症状も出やすくなってしまいます。

自分の欲求とうまく付き合う

そして2.ですが、例えば、食欲、性欲、睡眠欲を三大欲求と言ったりしますが、自分に正直になる事はこれらの欲求を大事にする事でもあります。
しかし正直になりすぎてこれらをむさぼりすぎると体に良くない事は火を見るよりも明らかですよね。
なので正直になりつつも我慢も肝心です。
つまりは健康に生きていく為には、欲とうまく付き合って行く事が重要になってきます。

そんなの当たり前でしょ、という話になりそうですが、ここに落とし穴があります。
それは、なんとなく我慢するという事です。
三大欲求に限らず、「自分の欲求に気付いてしまうと我慢ができないんじゃないか?」「そんな自分は自分じゃない」「そうあるべきではない」という考えや無意識の制約によって、うやむやにして、気づかないようにして欲から逃れていないでしょうか。

自分を感じてあげよう

食事であれば、何が食べたいのか?牛肉なのか、豚なのか、鶏なのか、野菜なのか、塩味で食べたいのか、甘辛く食べたいのか、焼くのか煮るのか蒸すのか?自分の体は今どんな栄養を欲しているのかを感じる事が大事です。
こういった事を、いつも感じないようにばかりしていると、食欲や自分は何を食べたいのかをあまり感じられないようになっていきます。
そして感じにくくなるように脳はあなたのエネルギーを低下させていきます。
自分の欲求に気付いてあげることが自分自身を大事にするという事であり、それをしっかり感じられるという事はエネルギーを高める事に繋がっていくのです。

欲求とうまく付き合い、よりよい人生に

しかし1.と2.は、相反することが多々あります。
これは難しいことですが、2.の欲求を感じて認めた上で、「それを実行した場合としない場合でそれぞれどういうメリット・デメリットがあるのか」という事実を客観的に見つめ直す必要があります。
そうしてお互いの落としどころを探っていきましょう。
なんだか人間関係と似ていますね。
自分の欲求の問題も人間関係もお互いの事を無視せず尊重しあい解決策を探っていく事が人生の要になるのかもしれません。


(C) 1996 健療施術院