女性ホルモンの乱れと月経(生理)にともなう不調

更新日:2018.06.26

執 筆:整体師 佐久間舞

☆女性ホルモンと月経(生理)の関係についてレポートしています。

~ 「女性ホルモンと自律神経の深い関係」vol.3 ~

月経が安定していることや正常であることとは無関係に、月経前や月経中には大小さまざまな心身の不調や違和感をともないます。
その種類は150に及ぶとも言われるほどに多様です。

ここでは、月経中の不調である「月経困難症」、おもに月経前の不調である「月経前症候群」および「月経前不快気分障害」をとりあげます。

月経困難症

月経の直前または開始のタイミングで始まり、月経の途中または終了とともに消失する症状です。
代表的なのはいわゆる「生理痛」で、下腹部や腰部など骨盤周りの痛みや頭痛などです。
ほかには、全身倦怠感、吐き気、食欲不振、下痢などの症状があります。
これらの症状により日常生活や社会生活(仕事、学校)などに支障をきたすレベルになると「月経困難症」とされます。

原因として有力なのは、「プロスタグランジン」という物質による作用です。
この「プロスタグランジン」は、傷や体への刺激に反応して作られ、痛みを伝える、子宮などの筋肉を収縮させる、といった働きがあります。

子宮筋腫や、子宮内膜症、子宮腺筋症などの疾患があると、それらの炎症にともない「プロスタグランジン」が多くつくられて痛みが強まります。
子宮に近い腸の収縮が誘発されると、下痢につながります。

また、子宮の発育状態や形や位置によっては経血を排出する経路が狭くなっている場合があり、押し出すのに子宮の収縮が強まるために痛みを発しやすくなります。

なお、子宮の異常が特にない場合でも、プロゲステロン(黄体ホルモン)がプロスタグランジンの合成に関与していることから、排卵があって黄体が形成されていれば、ある程度の痛みをともなうことが考えられます。

月経前症候群(PMS)

「月経前のタイミングで始まり月経の開始または終了にかけて完全に消失する症状です。
ここでいう「月経前」というのは、排卵から月経開始までのおよそ14日間の「黄体期」をさします。
また、月経開始から終了にかけて症状は改善していったあと、まったく無い状態がおよそ7日間は続きます。

その種類や程度は千差万別で、ほぼ気にならないレベルから治療が必要になるレベルまで実に様々です。
重篤な場合、「人格が変わったよう」になったり、異常行動(犯罪、自殺)がみられたりするケースもあります。
日常生活に支障をきたすレベルであれば後述の「月経前不快気分障害」として区別され、抗うつ薬による治療が行われる場合もあります。

症状

代表的な症状の一部は下記のとおりです。
月経前症候群の場合、その症状の多様さゆえに診断の基準として重要なのは「どのような症状なのか」というよりも、「いつ始まりいつ終わる症状なのか」ということになります。

身体的症状
  • 過眠、一日中眠い、または不眠
  • 過食傾向、間食・糖・炭水化物を欲する、体重増加
  • 乳房の痛みやハリ
  • 頭痛、関節痛、冷え、のぼせ、むくみや膨張感、肌荒れ
  • 腹痛、便秘、下腹部の痛みやハリ
精神的症状
  • 抑うつ気分、空虚感、絶望感、自己卑下の観念
  • 強い緊張感、イライラ感、情緒不安定、突然の悲しみや涙
  • 集中力低下、気力低下、疲れやすさ

原因

原因ははっきりしておらず、黄体期に最も優位となるプロゲステロン(黄体ホルモン)が関与していると考えられています。
しかし、単純な分泌量の過不足と症状との相関関係は薄く、エストロゲンとの比率が影響するという説や、ホルモンの受容体(ホルモンを受け止めて細胞内部へ運ぶ役割をするもの)に何らかの異常が起きているという説など、諸説あります。
なお、プロゲステロンの受容体は、脳をはじめ全身のさまざまな器官に存在するとされています。

また、プロゲステロンの受容体には、アドレナリンによってその働きが阻害される性質があるといいます。
アドレナリンが分泌されるのは、ストレス状態にあるときです。
アドレナリンには心拍数や血圧、血糖値を上げるなど、交感神経を刺激して体をストレスと闘うモードにする働きがあります。
このことから、とくに月経前の時期には意識的に心身を休めてストレスを減らすことも症状の改善につながるはずです。

女性ホルモンが減少する更年期の対策

ここでは月経周期にともなう不調を中心とした内容のため、閉経前後のいわゆる「更年期」についてはふれていませんが、女性ホルモンがいかに多様な機能と繊細さと全身への影響力を持ちあわせているかということは述べてきました。
それらのホルモン量が低下する更年期というものが、いかに心身のバランスを崩しやすい時期かということが自然に見えてくることと思います。

「女性ホルモンの機能」でも述べた通り、女性ホルモンは副腎でも生成されており、閉経後の卵巣作用を補う役割を担っているといえます。
その副腎の最も重要な働きは「抗ストレスホルモンの分泌」であるため、過度なストレスは副腎を疲労させて、女性ホルモンの分泌をする余裕を奪いかねません。
更年期にそなえるとすれば、月経の異常を引き起こすようなストレスや、副腎を過労に追い込むようなストレスを遠ざけておくことが大切です。

このページでは、「女性ホルモンの乱れと月経にともなう不調」についてお伝えしました。
次の「女性ホルモンと自律神経が乱れる原因、ストレスを減らす」では、女性ホルモンと自律神経を乱す、ストレスについてまとめています。


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