顎関節症の症状と原因

更新日:2015.08.10

執 筆:整体師 古川華奈

顎関節症の症状と意外な原因について

~ 「顎関節症と脳」vol.1 ~

顎関節と脳は一見何の関連も無いように見えるのですが、実は密接に関係しています。

このページでは、

など、顎関節症の症状と原因を詳しく説明しています。

顎関節と口腔習癖

まず、顎関節に負担をかける要素の一つに、口腔習癖というものがあります。
口腔習癖とは、

  • 歯ぎしり
  • 噛みしめ
  • 爪噛み
  • 頬咬み
  • ガム咀嚼

など、上下の歯を強く擦り合わせる行動の事です。

口腔習癖の一つである歯ぎしりは、上手く上下の歯の咬み合せが出来ていない事でも起こりますが、むしろ脳へのストレスと関連が深いと考えられています。

今までに行われた動物実験によりますと、歯ぎしりは不安や恐れなどの情動刺激によって起こり、抗不安薬を処方すると収まることが確かめられています。

さらに、ストレスに対する感受性がとくに高い人では、歯ぎしり等などの体への構造的なストレスや、精神的、化学的、温度、湿度のストレスを受けると、咀嚼筋(噛む筋肉)の緊張が高まり、口の周りの筋に痛みを起こす事が分かっています。

他にも、

  • 楽器演奏
  • 歌唱
  • 喫煙
  • 頬杖

など、肉体的に顎に偏った負担をかけても同様の症状が現れます。
これらの口腔習癖が、顎関節周囲の筋に慢性的疲労をもたらしていると考えられています。

以上の事からだけでも、顎関節と脳というものは密接な関係があるという事が分かります。

顎関節症の症状

顎関節症とは、どの様な病気なのでしょうか?
日本顎関節学会では、顎関節症の症状を次のように定義しています。

そして、顎関節症と診断するためには、上の三つのうち、少なくとも一つ以上を持つ事が必要とされています。

顎関節や咀嚼システム全体の痛み

顎関節や咀嚼筋などの痛みには、関節痛と筋痛があります。
どちらも開口や咀嚼等、顎を動かす時の運動痛で、初期の顎関節症では、自発的に痛むことは少ないです。

なお、顎関節症患者のうち、関節痛のある患者さんと筋痛がある患者さんの数を比べると、筋痛がある患者さんの方が多いと報告されています。

関節雑音

関節雑音には、主に次の二つがあります。

  • クリッキング音(カックン)
  • クレピタス音(ザラッ、ミシッ)

クリッキング音は、開口や閉口の時に下顎頭が関節円板の縁を乗り越えるときに起こります。
クレピタス音は、開口や閉口の時に下顎頭と下顎窩の凸凹が擦れたときに起こります。

顎関節症患者のうち、クリッキング音がある患者さんとクレピタス音がある患者さんの数を比べると、クリッキング音がある患者さんの方が多いと報告されています。

顎運動異常

顎運動異常には、次の四つがあります。

  • 開口障害
  • 閉口障害
  • 前方・側方運動障害
  • 咀嚼運動障害

開口、閉口障害とは、筋肉や靱帯、関節を包んでいる関節包や関節円板に障害をきたし、口の開け閉めがしづらくなった状態です。

前方・側方運動障害は、関節円板が前方へ移動してしまい、下顎の下顎頭の運動がロックされ、クローズドロックと呼ばれる状態になって起こります。
クローズドロックとは、下顎頭がほぼ前方へ動かなくなってしまう状態です。

咀嚼運動障害は、顎の痛みの為、咀嚼運動(食べ物をかみ砕く動き)がしづらくなり、食べ物を摂取する事が困難になる状態です。

このように、顎関節症の症状は、「痛み」「音」「動きの制限」の三つに大きく分けられます。
これらのどれかに当てはまった場合、顎関節症だということが言えます。

顎関節症の原因

顎関節症の原因は複雑で、

  • 顎関節システムの脆弱さ
  • 歯ぎしり等の口腔習癖
  • 背中の丸くなった円背・猫背等の不良姿勢
  • 噛み合せの悪さ
  • 心理と行動

等、様々な原因が複合して起こる事が大半です。

構造的な問題

例えば、背中が丸くなった円背・猫背等の不良姿勢を続けていると、頭からブランコのようにぶら下がっている顎関節の位置不安定になり、もうひとつの原因因子である、噛み合せの悪さも発生してきてしまうという事が起こりうるからです。

このように、一つの原因から他の原因を誘発してしまうため、様々な原因が複合して症状が悪化してしまうのです。

心理的な問題

また、心理と行動というのは、顎関節症の原因、発症、症状の持続、いずれにも強く関わっているとされています。

顎関節症状がある人をストレスの強い環境におくと咬筋の活動が高まり、ストレスを減らす行動をとったり、抗不安薬を与えると症状が軽快したりします。

顎関節症の患者さんの場合、ストレスへの対処がうまくいかず、ストレスを蓄積した結果、一種の自律神経失調状態が生じてしまったりしてしまいます。

自律神経失調状態が続くと、脳への負担が増加します。
そして、脳神経と直結している顎関節の痛みが悪化していくという悪循環が生じるのです。

つまり、心理と行動は、顎関節症発症の要因の一つであると同時に、症状の発現と持続によって引き起こされた精神状態の悪化や、痛みへの感受性の低下という形を取って症状の進行を手助けしていってしまうのです。

顎関節症になる原因因子

顎関節症になる原因因子をまとめますと、

  • 顎関節システムの脆弱性:
    骨・関節円板・関節包・靱帯と筋が脆弱で傷みやすい。
  • 口腔習癖:
    関節と筋に疲労が蓄積しやすい。
  • 不良姿勢:
    下顎頭の後退と筋疲労が起こりやすい。
  • 咬合:
    咬合時の不快感、咀嚼癖の誘発
  • 心理と行動:
    精神的緊張とそれに伴う筋疲労が蓄積しやすい。
  • 全身の健康状態:
    生体の適応力が低下しやすい。
  • その他:
    外傷など、それ以外の誘因

となります。

以上の事柄が重なって人体に発生している時、わずかなきっかけで関節円板の転位(移動)や上顎への下顎頭の吸収(深い噛み合せ)、筋障害が起こり、関節雑音、筋痛、開口障害が現れると考えられるのです。

以上、顎関節症の症状と原因についてお話していきました。引き続き、次の「顎関節症の治療法」で、その治療法についてお話していきます。


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