怒りの材料となるもの

更新日:2019.05.21

執 筆:整体師 佐久間舞

☆怒りの材料となるものについてお話しています。

~ 「怒りの取り扱いかた~怒りを出して健康になる~」vol.2 ~

怒りをつくる材料にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、怒りがこみ上げてくるとき、体の中ではどのようなことが起きているかも含め、怒りの材料について述べていきます。

「体」がつくる怒り

われわれが生きていくうえで、体が常に「適切な状態」であるようにコントロールしているのは、主に「自律神経」と「ホルモン」の2つです。
そして、体をつくり、体を動かすエネルギー源やホルモンの材料になるのが各種の「栄養素」です。

これらはまた、感情とも深く関わっています。
そのため、知らず知らずのうちに、体が怒りを作り出しやすい状態になっていることもあるのです。

自律神経のバランスの乱れ

自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」の2種類があります。

交感神経は、活動的な状態を作る神経です。
副交感神経は、リラックスした状態を作る神経です。

この2つが状況に合わせて適切なタイミングで適度に働くことで、心拍や血圧、呼吸や免疫など生命を維持するための体内の仕組みがコントロールされています。

また、感情面では、怒りや不安、大きな喜びなどの感情と連動して交感神経が働きます。
一方、悲しみや安らぎ、懐かしさなどの感情と連動するのは副交感神経です。

自律神経をバランスよく働かせることができていれば、体は適切な状態に保たれやすくなります。
しかし大抵は、どちらの神経がより活性化しやすいかという「得意・不得意」が、多かれ少なかれあるものです。

交感神経を働かせることが得意だと、感情も活動的なものが出やすく、怒りや不安、大きな喜びなどを感じやすく、感情を表現するのも得意な傾向があります。
副交感神経を働かせることが得意だと、感情も穏やかで静的なものが出やすく、悲しみや安らぎ、懐かしさなどを感じやすい傾向があります。
「表現する」ということ自体がどちらかといえば交感神経の働きであるため、その感情をわかりやすく表に出すことが少ないという傾向も見られます。

これらのことから、<交感神経を働かせるのが得意 = 怒りっぽい>と考えそうなところですが、そんな単純なものではありません。
たとえ怒りを感じやすくても、適切に表現したりうまく解決・解消したりすることができれば、さほど問題は生じないでしょう。
逆に、怒るのが苦手であったりうまく表現できなかったり、そもそも自分の怒りに気づけなかったりすることのほうが、さまざまな弊害を生じさせます。

どちらを働かせることが得意かというのは、「ストレスがどれくらいあるか」「今までどちらをたくさん使ってきたか」に大きく左右されます。

ストレスがかかると、自律神経が反応します。

すぐに解消できるような小さなストレスであれば、主に「副交感神経」が働き、穏やかに解消してくれます。
例えば、自分が少しイラッとするようなことを言われても苦笑いでスルーしたり、少しの揉め事を自分が謝ることで収めたり、といった具合です。

一方、すぐには解消できないようなストレスの場合、主に「交感神経」が働き、ストレスに対処するためのエネルギーを出せるような体の状態にします。
そして、いわゆる「戦うか逃げるか」という反応によりストレスに対抗します。
例えば、理不尽な対応をされたときに文句を言ってきちんと対応してもらったり、無理な要望や押しつけを断ったりといった具合です。

さらに多大なストレスを受け続けると、自律神経は疲弊しきってストレスに対して反応や対応もできない状態(フリーズ状態)になります。
思考を停止させて、ただストレスが過ぎ去るのを待つしかなくなってしまうのです。

「このくらいのストレスなら副交感神経で」「これ以上は交感神経で」という基準は、人によって異なります。
少しのストレスでも交感神経を使う人もいれば、大きなストレスでも副交感神経で対応しようとする人もいます。
また、ある程度のストレスがかかり続けるような環境下にいれば嫌でも交感神経で対応し続けるので、徐々にその反応パターンが得意になっていくでしょう。

重要なのは、自分の得意・不得意を認識することです。
そして、不得意なほうを強めていくことで、怒りをうまく表現したり解消したりできるようになります。

ホルモンの変化

生理前になるとイライラや頭痛などの不調が出る「月経前症候群(PMS)」。
また、閉経前後の期間に同じくイライラやほてりなどの不調が出る「更年期障害」。
これらの主な原因とされているのが、ホルモンバランスの変化です。
特に、「エストロゲン」の分泌量が急激に低下することが、大きな原因と考えられています。

エストロゲンのレベルが下がると、同時に「セロトニン」という気分を向上させ精神を安定させるホルモンのレベルも下がることで、特にイライラや落ち込みなどの精神的な不調が現れやすくなります。
さらに、元々男性よりも女性のほうが脳内のセロトニン量が少ないと言われています。

また、ストレスに対抗するため交感神経が働き続けたり、低血糖になって血糖値を上げる必要が出てきたりすると、「アドレナリン」や「ノルアドレナリン」といった感情に密接に関わるホルモンの分泌が促されます。

〔怒りに関わるホルモンの作用〕

  • セロトニン:精神の安定、気分の向上
  • アドレナリン:怒り、不安感
  • ノルアドレナリン:恐怖、不安感

栄養の過不足

栄養の過不足など、「口にするものの影響でイライラしやすくなる」こともあります。
ここでは、代表的なものを取り上げます。

低血糖症

血糖値が乱高下することで、自律神経とホルモン分泌に影響します。
具体的には、糖の摂り過ぎや空腹時の糖の急な摂取によって血糖値が急上昇・急降下します。
そして、血糖値の低下は危険なので(脳などのエネルギー源になっているため)、ホルモンと自律神経(交感神経)の働きによって血糖値を上げようとします。
この際に分泌されるのがアドレナリンやノルアドレナリンで、前に述べたとおり、怒りに関わるホルモンです。

過不足に注意する栄養素

※左にスライドできます。

カルシウム

血中濃度が低くなると、神経が興奮してイライラしやすくなります。

マグネシウム

精神や神経の安定作用があります。
カルシウムが2に対してマグネシウムが1という比率が崩れると、カルシウムの作用も不安定になってしまいます。

亜鉛

脳の神経伝達物質(神経間の情報伝達をするもの)の合成に使われ、情緒の安定に関わります。
また、脳内の有毒重金属(例えば、水銀は感情を不安定にしたり過敏反応を起こしたりします)の除去を行います。

亜鉛が1に対して銅が1という比率が望ましく、銅が過剰になるとアドレナリン・ノルアドレナリンレベルが上がり、気分の変調が激しくなる場合があります。

ビタミンB1

糖質をエネルギー変換するのに必要で、糖分過多で大量消費されると脳の栄養(ブドウ糖)不足につながります。

その他

ホルモンの材料となるものとして、タンパク質、ビタミンA、ビタミンE、コレステロールの不足にも注意が必要です。


積極的に摂るとよい栄養素

EPA、DHAは、脳の血液循環を改善する作用があり、脳神経細胞を活性化します。
いわゆる「キレる」症状を緩和すると言われています。

「頭」がつくる怒り

ものごとの捉えかた次第で印象や心持ちが変わるように、自分の考え方のクセや思考パターンによって怒りがつくられやすくなっている可能性があります。
また、自分を守って上手に生きていくために誰もが成長過程で身につける「防衛機制」というものは、特に怒りを抑え込むクセを作り出します。

怒りを生みやすい考え方

「認知のゆがみ」とも言われ、自分の考え方のクセというフィルターを通してものごとを捉えるため、受け止めたものと事実との間にズレが生じて、必要以上にネガティブになるなど、さまざまな偏りを生んでしまいます。
ここでは、2つのクセを取り上げます。

完璧を求める「白黒思考」

極端な完璧主義。全部OKでなければゼロに等しいと考えます。
100点のうち99点をとっても「100点を取れなかった」と捉えます。
常に完全・完璧ということなどあり得ないため、当然満足できないことのほうが多く、常に欲求不満やストレスを抱えることになります。
また、ほんの少しの怒りを出すことも、怒鳴りつけて非難することも同じと捉え、なかなか怒りを出せずに溜め込むことになっている場合もあります。

自分を追い込む「すべき思考」

「~すべきだ」「~でなければならない」「~してはいけない」など、自分の思い込みや決めつけを基準に考えます。
実際にはその基準に反したところで何の問題もなかったり、そもそも無理な基準であったりします。
結果的に自分がその通りに行動できなかったり、周りが基準に反するようなことをしたりして、落胆や怒り、欲求不満などストレスを増やすことになります。
怒りをうまく表現できなかったり抑え込んだりするのは、まさに「怒ってはいけない」の思考が背景にあると言えるでしょう。

怒りを生みやすい交流パターン

心理学の分析手法のひとつに「交流分析」というものがあります。
人との「交流」のしかたに焦点をあて、その感情・思考・行動パターンを分析するものです。
これらのパターンは、過去に親や先生などから教わったものや、子供のころに体験してやってきたものの再現です。
どれが良い/悪いということはなく、ひとつのパターンに頼らないということが重要です。
ここでは、特に怒りを抱えやすいと思われる2つのパターンを取り上げます。

周りに合わせる「いい子」

交流分析で「従順な子供(Adapted Child/AC)パターン」と言われているものです。
周囲に合わせる、遠慮する、控えめ、相手の意見に従う、自分の欲求を抑えるなどの傾向が強い、いわゆる「いい子」です。
意識的にも無意識的にも我慢しやすく、感情の中でも特に怒りを我慢する傾向にあります。
抑えきれなくなると、反発や反抗という形で抑えていた感情が表出することもあります。
どちらかといえば副交感神経を働かせるほうが得意と言えます。

規律を重んじる「厳格な親」

交流分析で「厳格な父親(Critical Parent/CP)パターン」と言われているものです。
道徳や規律などを重んじ、ルールや信念に従って行動したり、人の指導や人を引っ張っていくことに長けていたりする、父親あるいはリーダー的な役割が得意な傾向のある人です。
規律やルール、信念に反するようなこと、筋の通らないことなど、いわゆる曲がったことに対して怒りを感じやすく、多くはその場で表現します。
どちらかといえば交感神経を働かせるほうが得意と言えます。

怒りから自分を守る防衛機制

ストレスが大きすぎるとき、辛すぎるとき、感情を出したくても出せない状況にあるとき、その一つ一つの感情や辛さに向き合って対処していたのでは、心身も疲れ果ててこのまま続けば生命が脅かされてしまいます。
そのようなとき、心理学でいう「防衛機制」という手段をもって自らを守るという働きが備わっています。
その代表的なものが「抑圧」です。

感情を抑え込む「抑圧」

文字通り、抑え込むことです。
直面すると多大なストレスがかかってしまう、自分が脅かされてしまうような感情や欲求を無意識のうちに抑え込み、自分をその脅威から守ることです。

感情を抑え込むには、筋肉の緊張を伴います。
言いたいことを抑えるのに口唇をぎゅっと結ぶ、歯を食いしばるといった比較的わかりやすい緊張もありますが、自分で気づかないような箇所を気づかないうちに緊張させることも多くあります。
無意識の筋肉の緊張が続けば、エネルギーは消耗しますし、体の痛みや不調となって表に現れます。

このページでは、「怒りをつくる材料」についてお伝えしました。
次の「怒りが及ぼす影響」では、怒りが及ぼす様々な影響についてお伝えしていきます。


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